2020年にハタチを迎える世代のミレニアムライターが、
「1000 Days to Go!」月間にイベントに出向き、
イベントレポートと気になるゲストにインタビューします。

ParaFes2017を観覧

 11/15、両国国技館にて行われた「ParaFes 2017〜UNLOCK YOURSELF〜」(主催:日本財団パラリンピックサポートセンター)に行ってきた。これは、音楽とスポーツの融合を通じて、「障がいの有無に関わらず、誰もが1つになれる場所」を実現する大規模フェスだ。パラリンピックのメダリストや、様々な障害を持つミュージシャンたちが登壇し、終始会場を盛り上げた。今回、特に印象的だったのは、両腕のないブラジル出身のミュージシャン・Johnatha Bastosさんのパフォーマンスだった。彼は、わずかな両腕の一部と顎を用いてピアノを奏で、足でギターを操作するなど驚異的なパフォーマンスで観客の話題をさらった。

小さな鍵盤に顎を的確に打ち付け、力強い音色を作り上げる彼の演奏に私は心を打たれた。「楽器から音色を引き出す方法に固定的なルールはない」ということを実感した瞬間だった。
そして、幸運にもJohnathaさんに直接お話を聞くことができた。インタビューでは、彼の考える音楽の魅力、そして今後の展望など様々な質問を投げかけた。

「どうせできない。」のイメージから抜け出したい。

 — イギリスのテレビ局「Channel4」が制作したリオパラリンピックをPRするCM『We’re The Superhumans』が持つメッセージとは何だとお考えですか。

 「障害の有無に関わらず、すべての人が困難を乗り越えられる。」ということです。出演者たちは全員、なんらかの障害を抱え、「どうせできないだろう」という周囲からの偏見と戦ってきた人たちです。だからこそ、そういった自分たちへのマイナスイメージを払拭し、困難に立ち向かう勇気を与えたかったのです。そういう意味でも、あのCMが世界中の人に届いたということは本当に嬉しいですね。これからも、全ての人の挑戦を後押しする存在になれるよう、アーティストとして頑張りたいです。

「音楽」 が秘める可能性

 — Johnatha さんは、幼い頃から音楽と共に生きてこられていますが、音楽が持つ力とは何でしょうか。

 「人の心を揺るがす力」だと思います。これは、音楽だけでなくスポーツも含め「アート」といわれるものに共通するものであると考えています。たとえ言語が壁になっている人間同士でも、壮大な作品を共に見れば、お互い「美しい」という感情を同じ瞬間に持って、それを表情などで伝え合うこともできるわけです。それは会話とはまた異なるコミュニケーションであると私は考えています。だからこそ音楽やスポーツというのは、オーディエンスとプレイヤーが一体となって作り上げる大きな「作品」であると同時に、新たなコミュニケーションの出発点と捉えることができるのではないでしょうか。

今後伝えていきたいこと

 — アーティスト活動以外に、今後積極的に取り組みたいことはありますか?

 具体的な活動というより、自分の経験を自信に変えていく大切さを伝えていきたいです。どんな人間にも困難は来ます。現在渦中で戦っていなくとも、過去には必ずみんな何かに立ち向かい、乗り越えて来ているのです。でも、多くの人がその経験を忘れてしまって、再び困難に立ち向かった時に自信をなくしてしまう。だからこそ、過去を振り返り、「どんなことも乗り越えていける」という気持ちを強く持つことが必要だと考えています。

Johnathaさんが思い描く2020年

 — オリンピックと比較すると、パラリンピックへの社会の関心はまだ十分ではないと思います。今後、どのような参画促進活動が必要でしょうか。

 リオパラリンピックの時のように、エンターテイメントとの融合というのは効果的であると思います。素直に「すごい」と感じられて、関心を持つきっかけになりやすいからです。みんな知らないだけで、知る機会さえあれば、パラアスリートにも競技にも興味が湧くのだと思います。ただ、その時に彼らを「かわいそう」や「頑張っているな」などと同情的な眼で見てほしくはない。誰にでも障害や困難はあって、それが表面化しているか否かのそれだけの違いなのです。だからこそ、それらを乗り越えて限界を越えていくパラアスリートから学べることは大きいと思います。

 — 東京パラリンピックまで残り1000日になりました。我々は、残りの日数をどのように過ごしていくべきだとお考えですか。

 特別なことをするというよりは、1日1日を楽しんで、アスリートから沢山のことを学ぶということが大事だと考えています。オリンピック・パラリンピック関係なく、世界の大舞台でパフォーマンスをするアスリートから学べることは沢山あるでしょう。
ですが特に、パラリンピックに出場する選手は驚くような過去を持っていたり、オリンピックの選手とは異なる困難を乗り越えてきたりするので、話を聞ける機会があれば積極的に行ってみてほしいです。そのようなアクションをすることで応援の姿勢も変わりますし、大会を盛り上げることにもつながると思います。今から私も、東京大会が楽しみです。

ミレニアムライター 嶋田薫子